愛と憎しみに果てに(12)

2015年12月12日

私がこの事件のことを他人に初めて告白したのは大学三年の冬だった。
 中学を卒業した私は家から遠く離れた県立高校に通うことになった。高校に入学が決まり新しい生活が始まると言うのに私は不安でいっぱいだった。小学生の頃からソフトボールを始め中学でも野球部だった私の幼いころの夢はプロ野球の選手だった。だから当然の様に高校でも野球部に入部した。が一つだけ問題があったそれは自宅が遠かったため寮に入らなければならない事だった。私は寮での他人との共同生活に強い不安を感じ上手くやっていく自信が持てなかった。入部してから三日後私は野球部の部長に退部を申し出た。部長は突然のことに驚いていた。夢であったはずのプロ野球の選手になる道を私は挑戦する前から自分で閉ざし諦めてしまった。私に残ったのは言いようのない後ろめたさだけだった。その後私は中学からの親友と一緒に弓道部に入った弓道場と野球場は道路を隔てすぐ隣でいつも部員の声や打球音が響いてた。私は夢に向かって懸命に練習している彼らに引け目を感じずにはいられなかった。他の部と違い弓道部は男子と女子が一緒の道場で練習し先輩後輩の上下関係がそれほど厳しくなく和気あいあいとした雰囲気だった。二年になり6月の高校総体が終わると引退する先輩に替わり私は弓道部のキャプテンになった。その年の夏小丸川の川原キャンプ場で三年生や大勢のOBも参加して弓道部のキャンプがあった。杉の木の林の中にテントを張り昼間は川で泳ぎ夜は遅くまでキャンプファイアーの火を囲んだ。楽しいキャンプのはずなのに私はうかなかった。それは親友のある行動が原因だった。親友には中学時代から交際している彼女がいた。彼女と私は小学校の同級生で私の初恋の人だった。中学一年の時私は彼女に手紙で告白し振られたがそれでも彼女のことが好きだった。中学二年の修学旅行の際彼女と親友が付き合い始めた時私は彼女のことを諦めようと思い他の女子と付き合った。しかし彼女は親友のことが好きだったらしく付き合い始めて暫らくして彼女のほうから別れたいと言ってきた。その親友がいつも一人の女子部員の傍にいて親しげに話をし彼女に好意を持っているように見えた。付き合っている彼女がいるのに女子部員と親しくしている親友に私は怒りを覚えた。私は彼と女子部員を遠ざけようと何かにかこつけて彼女に近づき話しかけた。キャンプファイヤーの火も消えテントに戻り親友と話すと親友は女子部員のことが好きかもしれないと言った。私が付き合ってる彼女はどうする気だと問い詰めると親友はそれはと言いかけ口をつぐんだ。私は初恋の人だった親友の彼女のためを思い女子部員に近づいた。決して親友のためではなかった。

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Posted by mplan at 08:29 | Comments(0) | 小説
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